「浮気が原因で離婚されたと聞きましたが」
「夫婦になると、色んな問題に直面するものですのよ。
どうかしら。あなたもちょっとだけ、私と結婚してみる?」
「まるで僕を罠に誘っているみたいですね」
「ふふっ」
家の中では気まずいので、外でいちゃつくジョフさんです。
「トレントさん帰っちゃったし、私が夕食を用意するわ」
「キンバリーさんの初料理か。楽しみだなぁ」
キッチンでは、珍しくキンバリーが手の込んだものを作ろうとしています。
「あ、そうだ! あの手があったか!」
「どこ行くんです?」
突然料理を放棄して、駆け出しました。
「しばらく魔法を使わなかったから、自分が魔女だったってこと、すっかり忘れてた。
ナントカカントカ・ナトリメンって、食べ物を出す魔法があったじゃないのよ!」
こんな時こそ、魔法を使わないとね。
決して手抜きではありません。
ちなみにここは、トイレです。
「キンバリーさん、遅いな。食材が乾いてしまうよ」
キッチンでは、仕方なくキンバリーのやりかけ料理を続けるコナーさんの姿。
料理スキル0なんですが、サーモン料理はうまく作れるんでしょうか。
「うっふーん♪ 夕飯できたわよん」
「キンバリー、今トイレから出てこなかった? サプライズ料理とか、言わないでくれよ」
本当にトイレから練成したサプライズ料理は、見たくないですね。
「ジャジャーン! ……あら?」
気になる料理は、苺パイでした。
デザートじゃないか!
「キンバリーさん、サーモンの火加減これで良いのかな……」
後ろでは、地道に料理を続けるコナーさん。
「うふ♪」
「んふ♪」
まだいちゃついてる二人。
実はここ、人通りが激しいんですよね。
アパート住人に二人のうわさが広まることでしょう。
「おいしそうですねー! キンバリー奥さんのお手製苺パイですか。
どれ、私もひとつ……」
「あ、ちょっと待って待って! い、今サーモンが焼け……。これ、ひっくり返すのかな?」
コナーさんがせっかく高レベルの料理に挑戦してくれているというのに。
コナーさんが苦心して仕上げたサーモン。
家族は一応、こちらから先に食べてくれたみたいです。
お客さんは、パイですが。
「結婚って良いものよ、タラちゃん」
「おば様達を見ていると、私羨ましくなっちゃいます」
「タラ、別に急いで結婚する必要はないんだよ」
「あの~、サーモンの味はいかがです?」
「ちょっと焼きすぎじゃない?」
料理を放棄したキンバリーから、手痛いお言葉。
「星が綺麗ですね。なんて澄んだ空だろう」
「だって、そろそろ冬ですもの……」
凍死しないで下さいね。
こんな通り道で転がってたら、行き倒れにしか見えません。
「ィエイッ! お熱いね~」
人目をはばからない二人。
こんな夜遅くに仕事着のままでアパートをうろうろしているご近所さんも、不審者かもしれませんが。
家の人達が寝静まって、ようやく家の中に入れた二人。
「寒かったですわね」
「これから暑くなりますよ」
(やっぱり大人の女性とのロマンスの方が、燃えるね~)
(こいつもお金持ってるし。あのじいさんと、こっち、どっちを落とすのがいいのかしら)
裏では色々と駆け引きが。
そして翌日。
再びケントさんがコーディアル家に戻ってきました!
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