「エスプレッソひとつね」
「はーい」
このお客さん、すごいメイク。
それより、後ろに並んでるティーンって、もしかして……。
「今日、学校で喧嘩した奴の一人だっけ?」
「なんでお前がここにいんだよ……」
「バイト」
「校則違反だろ。ダウンタウンでバイトって」
「そっちこそ、校則違反て言える口じゃないだろ。髪染めてるくせに」
「……っ、むかつく奴だな。この成績最下位!」
「誰のおかげで、お前が最下位になるのを免れてると思ってるんだよ」
左目に、上手い具合にヒットしたんだよねー。
俺より腫れてるかもしれない、こいつ。
髪も左目も紫だ。
俺がカウンター越しに、プチ修羅場をしている時。
「お嬢さん、ファーストキスは何味でした?」
「ん~、ケチャップとカラシの味」
店長、なにナチュラルにお客に混じって談笑してるんですか。
仕事してください!
ところがその数分後、突如として店内で喧嘩勃発!
なんで?
「まー、客同士にも色々人間関係があるからな」
店長はいたって冷静。
よくあることなの?
「他の客も喧嘩観戦で仕事にならんから、エスプレッソでも飲みながら休憩を取るのが一番だ」
「……店長、さっきも休んでたじゃないですか」
「いいから、一杯入れろや」
「オラオラオラーーーー」
「ギョエエエエエエ」
白熱する喧嘩。
本当に、このお店に来るお客って、やりたい放題だな。
あ、喧嘩の決着がついたみたい。
店も落ち着きを取り戻して、よかった。
「『モカ』が輸入禁止になったんでしょ? このカフェ大丈夫ですか?」
「在庫あるんで、しばらくは大丈夫です。
てか、こっちが在庫心配になるくらい、コーヒー注文して欲しいんですが」
「がぶ飲みするもんじゃないし……」
「植物シムとしては、残留農薬についても心配なところですね」
店長、休憩しすぎ……。
そして、店長がトイレに立った隙に、事件は起こりました。
新聞持って入ったから、きっと長いな……。
「ちょっと顔貸せ、おら」
「今、仕事中だっつーに!!」
店に来ていた喧嘩相手が、俺に勝負を仕掛けてきた!
店内で、今日二回目の喧嘩ショー開幕。
「弱っちい癖に、よくも俺の顔に傷を付けやがったなー!!」
「ちょ、それこっちのセリフーーーーーー!!!」
「つーか、俺の仕事の邪魔までするなーっ!!」
「んなもん、知るかーーっ!!」
くそ、こうなったら仕方ない。
とにかく勝つぞ!
「右目も殴って、紫パンダにしちゃる!!」
「むぎゅーーーーっ!!!」
周りのお客さん達には、観戦して楽しんでいただいてます。
こっちは必死なんだけど。
「必殺顔面張り手ー!!」
「あた!」
今指が鼻の穴に入ったって!
「隙あり!!」
「おう!?」
も、もしかして、今度は勝てるかも!
前へ / 次へ
PR
トラックバック
トラックバックURL: