「出来たわよ。ガーリックナンが」
「はーい!」
初の手作り夕ご飯だ。
「どう? これで分かったでしょ。
私、料理が出来ないわけじゃないの。やらないだけなの。
今日は特別ってわけなのよ」
「う、うん。疑って悪かったよ……」
パンにガーリックバター塗っただけで、そんなに得意になられても……。
あ、でも香辛料のさじ加減はいいかも、です。
「それより、お金欲しいわよね。お金!」
「まあ、無いよりはあった方がいいけど。どうしたの、当然」
「旅行とか、行ってみたくない? 例えば、南国の島」
「旅行ー?」
「そんなお金あるんだったらさ、先にテレビ買わない?
それに、キッチンに電気つけないと、今のままだと薄暗いじゃん?」
「んなこと言ってたら、いつまでたっても旅行にいけないわよ。
それに旅行で得た芸は、大道芸で稼ぐのにも使えるし」
「……芸のために、旅行?」
「この私が、ただ楽しむだけに旅行すると思う?」
その大道芸とやらは、姉貴が習得するんでしょうか?
それとも……俺?
姉貴の頭には、お金儲けのネタが溢れてるみたいです。
儲かりそうのない感じのものばかりだけど……。
二人ともお腹がすいてたから、二皿目。
「姉貴ってさぁ、定職とかにはつかないの?」
「あは? 何それ?
そういうの、私の性には合わないの。
私は好きなようにお金儲けしたいんだもん♪」
ダメだこの人。
やっぱり俺がバイトで稼いで、キッチンに電気つけないと……。
食後に軽く運動。
(俺って多分、苦労してるんだろうな、色々と……)
そんな夜。
ずっかずっか。
不審者侵入。
玄関の鍵かけてなかった……?
「あー、いいお風呂だった……。
……階段から降りてくるのは、一体どちら様?」
じーっ。
え?
俺に用なわけ?
「ちょっとヴァズ!
あんたいつこのターミネーターみたいなのと友達になったわけ!?」
俺にそんな覚えはありません。
ターミネーターは、フィットネスクラブの会長さんだった。
「我々は、同じ趣味を持つ仲間を一人ぼっちにはさせない。
我々とともに日々鍛錬を積み、健康で強靭な肉体を手に入れたまえ!」
「あ、頑張ります……」
「うちのクラブにも顔を出してくれると、大歓迎だ」
「そのうちにお邪魔するかも」
「ったく。なんなのよ。
乙女の家に勝手に入ってきたりしてっ!
腹立つから、もう一回お風呂に入る!」
当然姉貴はご立腹。
趣味クラブの人、不法侵入で有名だったっけか。
「それじゃ……」
会員証だけ手渡すと、ターミネーターは帰っていきました。
会長さんだけあって、すごい体格だなぁ。
というか、クマが置きっぱだし。
俺も頑張ったら、あんな体になるのかな。
あんなになったら、喧嘩も怖くないよな。
エアロバイクが着てから毎日結構頑張ってるし、少し逞しくなった気がするんだけど。
「ぬん!」
マッチョポーズ。
……全然筋肉出てないし。
鍛え方が足りないな。
「でも、腹筋が前より目立ってきてるんだよねー。
服の上からでも、縦のくぼみが……」
「じーーーーーーーーっ」
え?
姉貴?
「いつからそこに?」
「アホな事やってないで、とっとと寝なさい」
「はい……」
明日からまた一週間が始まるな。
学校に宿題に(やらないけど)、喧嘩にバイト。
忙しいな、ほんと。
というわけで、ナワン家の日記はこれでひと段落。
新しい月曜日は「Simpl Life3」から始まります!
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