金曜日。
夜中からの雨が、朝になっても上がらなかったみたい。
明け方近くまでエアロバイクをこいでいたおかげで、スリム体型に元通り。
寝不足でふらふらだけど。
「わーっ、乗る! 乗りますっ!!」
何とか遅刻せず、毎日学校に行けてる。
D-かFの成績表をもらって帰ってくるだけだけどね。
「も、漏れそ……」
切羽詰った状態で、姉貴がご起床。
相変わらずの大胆パジャマ。
「さーて、鍋つかみは卒業したから、今度はぬいぐるみに挑戦よ~」
姉貴はまだ、太め体型からは脱出してない。
どうしても、内職で生活費を稼ぐのが優先しちゃうからなぁ。
午後1時に帰宅。
今日は喧嘩にならなかったけど、昨日の傷がまだひりひりする。
薬ぬっとこ。
「あ、ニキビ」
高校生は色々大変な年頃なんだな。
今思えば、中学時代なんてたいしたことなかったよ。
「……」
「あっ、姉貴。俺バイトに行……。
それ、作ったの?」
「ワガヤのカケイはミギカタサガリ!!!」
腹話術……。
「キョウもタクサン、カセイでキテネ!」
「姉貴、そのクマ上手に作ったね……」
「ボクはスグにウラレてイクウンメイ!
キミがカエッてクルコロにはイナイケド、イッテラッシャーイ♪」
「……行ってきます」
バイトに行く前に、どっと疲れた気がする。
しかしこのときの俺は、留守中この家で恐ろしい事件が起こる事を今だ知らない。
「ぎゃおおおおー!!」
「むがーーーー!!」
バイト先のカフェは、今日もお客が絶好調!
しかも渦中にいるの、この前のお客達とは違うみたい。
なぜよりにもよって、仲の悪い人同士がこのカフェに集うんだろう。
「ここのエスプレッソは最高ですよ!
何せ、それ以外いっさい売り物がないんですから。
この店は、エスプレッソにその全存在をかけてるんです!!」
「ふーん。じゃ、一杯もらおうかな」
今日のお客さんは、なんかおじさんが多いなぁ。
しかもひと癖もふた癖もありそうな人ばかり。
「あのー、ここが有名な『最高に居心地のいいトイレ』があるお店?」
「その通り。
一流のお店はトイレが命。
その存在の全てが、ピカピカに磨き上げられた便座にかかっているんです!」
あれ、店長。
エスプレッソが命じゃなかったんですか?
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