「ううっ、さぶ……」
「また、ソファーで寝ちゃったのかな。……?」
「ここ……。ああ、そうか。施設にいたのかと思った……」
でも、養子の話は手違いだったんだよな。
俺、帰んないといけないのか……。
エーナさんは、まだ起きてきてないみたい。
黙って出て行くわけにもいかないから、起きるのを待ってようか。
昨日のピザ、片付けておこっと。
チーズとトマトソースの匂いが、すごいや。
「オーッス! 早いわね! 風邪ひかなかった?」
「おはようございます。俺、そろそろ帰……」
「あっそうそう。言い忘れてたけど、あんた、今日から家の子だからね。そういうことでよろしく」
「え?」
「学校の手続きも済ませたから」
「へ?」
「あの……一体何が!?」
「だ・か・ら、あんたは今日からナワン姓を名乗れってこと! ほら、スクールバス来ちゃったよ!」
「バス? あっ、ホントに来てる!」
「初日から遅刻なんて、許しませんからね。ほら、行った行った!」
それにしても、この家、見事に屋根がないっす。
「やあ! 新入生君!」
「はじめまして……」
俺は何が起こったのか分からないまま、学校へ。
本当に、エーナさんに何が起こったの?
もしかして、あの人をお母さんって呼ばなきゃいけないって訳?
「さーて、送り出したのはいいけど、あの子のベッドと勉強机をそろえるお金が……。
財テクアドバイス? あー、これなんか楽して儲かりそう。
それにしても、玄関先に放置してあったピンクの箱に、こんなPCが入っているとはね。
貧しい家にでも、配って歩いてるのかしら。嬉しいわね」
「なになに? 『ローリスクで儲けたい』か。虫が良すぎるわよ。
ま、適当にアドバイスっと……。先物取引で、森のCDを買い占めろっ……と」
「……あー、だめだ。財テクアドバイス、楽なだけあって大して儲からないわ。
早くしないと、学校から帰ってきちゃうわよ。
やっぱり、ダウンタウンに出稼ぎに行かなくちゃ」
「ん~。お昼の仕事だし、ドレスは大人しめの方がいいかな」
「…………。
私、本当にあの子とうまくやっていけるかな……」
新聞泥棒と、郵便屋さん……
「うわちゃー。引越し翌日に請求書が届いたし。
112$か……。こりゃ、よっぽど稼いでこないと」
(先の生活が、思いやられるわぁ)
エーナさんは、ダウンタウンへ出稼ぎに行きました。
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