「ピザが来た♪」
ピザ一枚40$って高すぎ!
おかげで、我が家の残金は49$!
困ったわねぇ。
明日からどうやって食べていこうかしら。
「あら、ここのピザ、結構いけるじゃない」
「ですね……」
大学を卒業して、単身やって来たブルーウォーター村。
ここから、私のまったく新しい人生が始まるのよ。
でも引越し初日で、頼みもしないティーンの養子がやって来るわ、お金がなくて家には屋根がないわで、先が思いやられるわよ。
これから雪の季節だっていうのに。
ところで、引越しの挨拶に来たお客さん達、ピザ食べてくれないのかしら。
せっかく、身を切る思いをして注文したのに、家の中でキックバックなんか始めちゃって。
男ってのは、本当に空気読めない人種よね。
あ、彼女はピザ食べてくれるんだ。
「私、ここのショッピング街でハンドクラフトのお店をやってるんです。機会があったら、一度覗いてみて下さいね」
あらそう。
気が向いたら、行くかもしれないわね。
この人、きれいな顔をしてる割には、食べ方が……。
こいつも……。
ま、ピザごときでお行儀がどうのとかは、言えないか……。
それにしても、あの男ども。
いつまでキックバックしてるつもりよ。
テレビもラジオもない、何の娯楽もないこの家への嫌味ですか?
しかも、ボール蹴るのへたくそだし。
「私が手本を見せてあげるわ」
「おろ? うまいじゃないの、お嬢さん」
大学時代は、相当鍛えたものよ。
おだてたって、ピザ以上のものは何も出しませんからね。
見てみれば、ヴァズ君も手芸店の彼女とキックバック。
彼の動きがぎこちないのは、彼女が美人で緊張しているからかしら。
お客さんが帰って、日が暮れて。
屋根がないと、やっぱり寒いわね。
あら、疲れちゃったのかしら。
そりゃ、今日は色々あったものねぇ。
こんなところに寝かせると、風邪ひくかしら。
悪い子じゃないと思うのよねぇ……。
「福祉施設さん? 昼の件だけど、そっちのミスは、なかったことにしてあげますわ。あの子、私が育てます。もう十分育ってる気もするけど。その代わり、購入済みのベビーベッド、買値で引き取って下さる? 今すぐに!」
“考えなし”って言われるのには、慣れてるつもりよ。
私は決めたの。
もっとも、あの子がここで幸せになれるかどうかは、また別の問題かもしれないけどね。
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