「いらっしゃいませ。あれ、姉貴と近藤」
「仕事帰りに来たわよ」
「納車帰りに来てやったぜ」
「納車?」
「うん。俺んとこ、廃車のリサイクルやってんの。話してなかったっけ?」
「聞いてなかった気がする」
「人の話はちゃんと聞いときましょう」
「エスプレッソ一杯。3$に割引してね」
どこでも値切りを忘れない姉貴。
「ビタ一文まけん」
笑顔で一刀両断。
「じゃあいらない」
子供ですか。
「お宅、廃車のリサイクルやってるんですって?
新車に比べるとどれくらい安くなる?」
「モノによりますけど……」
エスプレッソを買わなかった姉貴は、その後店内でいろんな人とおしゃべり。
車買うつもりなのかな。
中古車といえ、家にはまだそんなお金ないと思うんだけど。
今は旅行資金溜めてるところだし。
さてこの辺でちょっと一休み。
「店改装して、従業員の休憩室も出来たんですね~」
「冷蔵庫に色々入ってるから、腹減ったらなんか食っとけ」
「はい」
「労働環境向上したなぁ」
以前は休憩できる所なかったもんなぁ。
俺はずっとバリスタやってて、店長は自分で自分のエスプレッソ買って、お客さんに混じって休憩してたくらいだし。
「お客じゃない人は帰ってください」
「あらごめんなさい」
俺が休息中に、エスプレッソ買わずに店内のステレオの前で踊り狂っているお客を姉貴を含め問答無用で帰す店長。
お店経営って、本当に大変だね!
そろそろバリスタの仕事に戻ろうか。
店内も午後遅くになって賑わってきて、いい雰囲気かな。
仕事も20時までだから、もう一踏ん張り。
閉店時間。
「店長、表閉めてきましたよ」
「おお、ご苦労だった。夜の街は何かと物騒だから、気をつけて帰れよ」
店長、また閉店直前のグラスビールを一杯飲んでるね。
せめて閉店直後にして欲しい気が。
ちなみに今日のバイト代は200$足らず。
ちょっとだけ残業代が入りました。
気をつけて帰りたいのは山々だけど、まだ夜のお仕事が残ってます。
例の市民運動場。
人のいなくなったここで、思う存分お宝発掘!
「っんとうに、姉貴は自分の懐事情も省みず、あんな家具やらこんな家具やら買ってきてさっ。
借金どころか3日置きの請求書だって増えるっちゅーに!」
近々この街の請求書が、10倍に値上げされるうわさもあるんだよね。
そうなったらいくら姉貴が定職についてても、払える気がしない……。
「あっ」
また水道管を壊しました。
冬にびしょ濡れは寒すぎる。
夜遅いからあまり人はこないと思ってたけど、まだ遊んでる人もそれなりにいるね。
なぜかお年寄りが多いけど。
あちこち掘り返していい加減疲れてきた頃。
「やあ少年!」
怪しげな人が話しかけてきた。
どこの国の紳士?
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