翌朝。
なぜか前日とは違う執事さんがやって来ました。
まあいいか。
ひとまず、彼の仕事ぶりを見せてもらいましょう。
来て早々朝食を用意してくれたのはいいんですが……。
焼いたパイすら焦がしてしまうなんて。
どうやら、そそっかしい性格みたいです。
「カウンターに、お焦げを落としてしまいました」
朝食を用意した後は、お掃除を始めてくれました。
なかなか有能です。ケントさんよりは。
さて、執事が用意してくれたオコゲパイを食べていたサマンサ。
突然立ち上がりました。
「き、来た?!」
「いだ、いだいだいだっ!!!」
「やだ。オコゲがお腹に悪かったのかしら?」
「キンバリー! 産まれるのよっ、赤ちゃんがっっ!!」
執事観察ですっかり忘れてましたが、今日が出産日だったんですね。
「キッ、キンバリーィィィッ!! ちゃんと見守ってってよーーーー!!!」
「椅子が邪魔で、立ち位置確保できないのよっ!」
狭いダイニングで、朝から大騒ぎです。
ちなみに執事は、皿洗い中。
椅子に通せんぼされていたキンバリーより先に、執事が出産応援の立ち位置へいち早く駆けつけました!
「奥様! 落ち着いて、深呼吸ですよ。
はい、ヒッヒフー!」
「ねえサマンサ、赤ちゃん、男かな、女かな?」
「キンバリー、私を応援する気は、全然ないの?」
阿鼻叫喚のダイニングに、なぜか郵便屋さんも駆けつけます。
「何事ですか?」
「今、サマンサ奥様に赤ちゃんができる所なんです」
「たいへんたいへん! ひ孫が産まれるのね~~!!」
「何事ですか?」
緊急事態に、おばあちゃんとアパートの前を通りすがった人までやってきました。
ちなみに、コーディアル家の旦那方はお仕事中です。
「ダーリンはいないけど、皆が応援してくれてる……!」
サマンサ、最後のひと踏ん張りです。
「わお! こんにちは、赤ちゃん♪」
「ぱぷ」
生まれたのは、女の子。
ブリタニーと命名。
「ちっちゃい魔女候補の誕生ね!」
キンバリーも、姪の誕生に大喜び。
ところで魔女になれるのって、やっぱり十代からなんでしょうかね。
なんにせよ、ブリタニーの成長が今から楽しみです。
「赤ちゃんですね」
「赤ちゃん♪」
「赤ちゃんだよ」
さて、無事子供も生まれたことだし、どさくさに紛れて進入してきた知らない人達には、帰ってもらいましょう。
執事さんも、仕事に戻ってね。
「はい、おばあちゃん。ひ孫よ」
「あらまぁ。長生きはするものね……」
おばあちゃん、あなた死んでますって。
「赤ちゃんですね」
「……赤ちゃんですけど?」
そこの知らない人、まだいたの? 早く帰ってください。
そしてサマンサ。
新しい執事さんに、ハート飛ばしてます。
浮気なんて、やめて下さいよー。
「ブリタニーちゃん。あなたも、ママみたいに魔女になるのかしら?」
「うま~」
「ブリタニーちゃんは、普通の魔女なんかがお似合いかもね~」
こうして魔法の知識は、母から娘へと受け継がれていくのですね。
「出産したら、お腹がすいちゃった」
一仕事終えたサマンサは、二度目の朝食です。
そういえば、執事は赤ちゃんのお世話もしてくれるらしいですね。
ブリタニーはおばあちゃんに一通り遊んでもらってから、ベビーベッドに寝かせました。
執事さんがちゃんとミルクを飲ませてくれるか、様子をみたいと思います。
(俺も、こんなベッドで遊んでみたいなぁ)
この執事さんも、ちゃんとベッドメイキングしてくれます。
ケントさんの無能っぷりが、どんどん明らかになってきましたね……。
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