水曜日。
今日も相変わらずの笑顔な、スクールバスの運転手さん。
「朝からチャーハンってのも、きついわね。
特に、お腹のお肉が余ってる時には」
今日は珍しく、姉貴は俺より先に起きてたんだよね。
とことこ。
何食わぬ顔で、突然我が家にやって来た侵入者。
「ちょっと……。
いきなりやって来て、何勝手に椅子に座ってんのよ」
「昨日の続きでやって来た」
「はい?」
「どういうことよ。
弟がただ同然でバイトするって話で、決着ついたんじゃないの?」
「何言ってんだ! 弟に尻拭いさせただけだろーが!
俺が決着付けに来たのは、昨日の往復ビンタの件だ。
今はガキが側にいないから、手加減しねぇぞ!」
「ちょ……」
というわけで、
レディー…ファイッ!!!
姉貴が倍返しする人なら、カフェの店長は倍々返しをする人だったようで。
でもこの為にわざわざ家にやって来るって、怖すぎなんですけど。
「むぎゅー!!! 離せこのチビヒゲッ!!!!」
「黙れ、この詐欺女っ!!!!!!!」
程度低い喧嘩だよね……。
俺、こんな大人にならないようにしよう。
「私だって、かつてはハイスクールのレディース軍団と、
素手で渡り合った過去がーっ!」
「そのメタボった体で、俺に勝てるかーっ!」
互角!?
少なくとも、二人とも程度は同じみたいだ。頭のね。
あっ、姉貴が負けた。
意外というか、当然というか。
「女を殴るなんて、サイテーよぉっ!」
「この辺はしっかり決着つけとかんと、図に乗られそうだからな!」
「あーもー、分かったからさっさと帰ってちょうだい。
気持ちのいい朝が、台無しになっちゃったわよ。
しっしっ!」
「弟が帰ってきたら、すぐに店によこせよ。じゃあな」
「中華の食べ散らかし、片付けとこ……。
(あのヒゲ、いつか見てなさいよ!)」
なんだか、長い戦いが始まりそう。
(強くなりたい。もう二度と負けないために……!)
「それはともかくとして、ここに引っ越してから、新聞読むの初めてね。
あれ、シムシティの市長替わったんだ?
前の市長、なんで辞めたんだろ。死んだ?」
「へー、簡単料理の連載とかしてるんだ。
ん? 『スージーおばさんの悩み相談室119』か」
「こういうコラムって、よくあるわよね。
私は悩みなんてないから、全然用なしだわ。
えーと、今日の天気は、と」
この人、悩みなんてないって、言い切ったよ?
「今夜は晴れか。
さ、ミシンしよっと♪」
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