こっちがバスルームね。
公共区画でお風呂ってのもなんだか落ち着かないかな。
しかし穴掘りで汚れても、ここですぐに洗い流せるなんて!
今後もお金に困った時は、積極的にここを利用させてもらおうかな。
「おーい。そろそろ帰ろうか」
お風呂から上がってチャーリーを呼びにいったら、なんだか見覚えのある背中が。
……あ。
あのコンビニでシムズのゲームを握り締めて、へんな笑いを浮かべてたおじさんだ。
あの後もちょくちょく町で見かけた気がするけど……。
こっち見た。
と思ったら、隣のお姉さんに話しかけたかったらしい。
なんだか分からないけど、変に緊張しちゃったな。
さ、帰ろうか。
(あの人、この辺りに住んでるのかなぁ?)
「一時はどうなるかと思ったけど、この間作った鍋つかみをばらしたら、クマちゃんの材料になったわ♪
何事もまずは頭を働かさなきゃねっ」
自宅に帰ると、姉貴もせっせとミシンをやってたみたい。
「で、どうだった? 今日の収穫は」
「骨が一本と、石ころが2、3個」
「それだけ?」
「実はすごいものがひとつ出たんだ」
「へぇっ! 穴掘りも結構儲かるのね」
「でも水道管を壊すし、ほどほどにしといた方がいいと思うんだけどね」
「それで今日で幾らくらい稼げた?」
「あんたの発掘物と、私のクマちゃん2つで、ざっと500$くらい。
後は私のバックパックにいつの間にかあった長靴を何足か売ったわ」
「じゃあ、明日も500$稼げば何とかなる?」
「なる」
「で、この地図が今日掘り出したお宝ってわけね」
「売るとけっこうすると思うんだけど、どうするの?」
「一応トゥウィッキーアイランドって島の地図みたいだけど、俺達そんな所に行く予定ないし」
「行けばいいのよ!」
「これはきっと、なにかのお告げかもしれないわ!
南の島の宝物が、私たちを呼んでるのよ!」
姉貴の表情が突然いきいきし始めた気がする。
「そうかなぁ。
でも家には旅行に行くお金ないじゃん。
家の維持費だって、これから支払いが大変になるんでしょ?
今の姉貴のミシンと俺のバイトと発掘の稼ぎじゃ、とても無理……」
「まかせなさい!
私、定職探すから!!」
あれ?
俺今、空耳聞いた気がするよ?
「定期収入で必要経費払って、あんたのバイトと私の内職で旅行費用貯めればいいの。
そしたら、夏までにはきっと貯まるわ!」
「大丈夫かなぁ」
「やっても損は無いわ!」
「きっと南の島には、これくらいたくさんの宝が眠っているはずよ」
「これくらい?」
「うん。そんくらい」
この宝の地図は、すでに我が家に素晴らしい宝をプレゼントしてくれたのかもしれないな。
って姉貴、実は宝の地図の事なんか全然考えてないだろ。
「……でもさぁ、定職に付くのってすごく当たり前の事じゃない?」
「いいから、とっとと寝なさい。
明日も大変なんだから」
(明日か……)
明日もバイトないし、どうしよっかな。
こうして新しい家での生活がスタートした土曜日。
支払いのノルマが増えたけど、姉弟二人三脚で頑張るつもりです。
……俺の方はどっちかと言うと、引きずられているだけな気もするんだけど。
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