時計のねじを巻くのは母の役目ですが、最近は時々忘れるようになっています。
そんなときは、私がねじを回します。
私たちが昼間家を空けている間、母は電話をしたり家事をしたり日記を書いたりしています。
この間、日記をそっと覗いてみましたが、まあヨハンとパスカルと孫達のことばかり!
ヨハンはよく私の胸の中に飛び込んできますが、母とヨハンでは、母のほうが彼に飛び込むことが多いようです。
なんだか、ちょっとうらやましいです。
ヨハンについて、二人でおしゃべり。
話題になるのは、彼の癖とか小さな失敗とか他愛もない事柄です。
私も母を真似て日記を書いたりしてみましたが……。
家族のいる部屋で、日記はかけませんね。
私だって、ヨハンのことを日記に書いてみたかったりしたかったんです。
私は彼を母と同様に、愛しているのですから。
家族団らん。
血筋のことを考えると、私たちはなんとも奇妙な寄せ集め家族なんじゃないのでしょうか。
母は私の親友です。
幼い頃から今日まで、困ったことは何でも母に相談してきました。
もっとも、ヨハンのことについてだけは、さすがに母には相談できませんが。
時にはヨハンそっちのけで、親子そろって枕たたきなんかを楽しみます。
母は、手加減してくれないんですよ。
その日は、大学に行った子供たちを家に呼びました。
こちらは、私の息子のマルコ。
こちらは私の弟のパスカル。
本当に若い頃のヨハンそっくりです。
パスカルは、フィアンセも連れてきました。
母は彼女を見て喜びました。
母はすべてに満足していました。
少なくとも、私にはそう見えました。
私の方は、過去には少なからず不満を持っていた時期もありましたが、今はもうありません。
母は、一度たりとして、私たちとヨハンの関係に不満を持ったことはなかったのでしょうか。
今となっては、もう聞く機会もありません。
とうとう母に、お迎えが来てしまったのです。
私にとっては、本当に想像だにできないことでした。
あまり涙は見せない人でしたが、このときばかりは、彼は泣きました。
私たちも泣きました。
まるで半身を失ったようです。
主のいなくなったベッドは、まるでそこだけにぽっかりと穴が開いたようです。
その晩私は、一人で母のベッドで眠りました。
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