母のなくなった翌日、私は仕事を休みました。
気が落ち込んで、何も手につかなかったのです。
そんな時、ヨハンが私をデートに誘ってきました。
驚きました。
そういえば、私とヨハンは、今まで一度だってデートをしたことがなかったのです。
当然それは、母がいたから……。
でも、今はもう彼女はいません。
私たちは、リバーブロッサム・ヒルズの共同墓地にある小さな聖堂へ足を運びました。
今母のお墓は家の裏庭にありますが、そのうち、ここに移す予定でもあったのです。
その時のための下見、という意味もあるでしょうか。
聖堂の中は、意外と人でにぎわっていました。
皆さん、お墓参りをしに来たのでしょうか。
私たちも死んだら、母と一緒に、ここへ埋葬してほしいと思います。
ヨハンと、そう話し合いました。
それにしても、変な気分です。
今までの私たちは、三人でひとつでした。
それが母がいなくなった今、私たちはひとつから二人の男女になった気がします。
本来は、それが正しい付き合い方なのかもしれませんが。
もう少し聖堂でゆっくりしたかったのですが、一本指でピアノを引いている人がいてうるさかったので、移動することにしました。
次にやってきたのも、町の小さな教会です。
最近出来たとかで、結婚式などに人気のある場所です。
たしかに、こんな立派な教会で式が挙げられたら、どんなに喜ばしいことでしょう。
そういえば、私たちは今まで一度も、結婚には縁がありませんでしたね。
「どうしてヨハンは、母さんと結婚しなかったの?」
「君の母さんが、したがらなかったからだよ」
そうだったんですか。
私はてっきり、ヨハンのほうがそうだったのかとずっと思っていました。
もう少しお話がしたかったのですが、ここにも一本指のピアノ奏者がいてうるさかったので、移動することにしました。
それから私たちは、ダウンタウンで服を見たり、
一緒に写真をとったりなどして、
結局、ロンドステに落ち着くことになりました。
高級レストランは初めてです。
それぞれ好きなものを注文することにしました。
私はオムレツ。
ヨハンは桃のタルトレット。
お金がかかりませんね、私たち。
私たちは、母に杯を捧げて食事にしました。
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