翌朝、大きくなった私のお腹を見て、ヨハンがどんな顔をするか試してみることにしました。
どちらにせよ、同じ家に住んでいて、顔を合わせないほうが難しいというものです。
しかしヨハンは黙ってうなずいただけで、すぐに本を読み出してしまいました。
私のあては、はずれもしなければ、あたりもしませんでした。
むしろ私は、マルコの反応のほうを恐れていました。
マルコの反応も、ヨハンと同じものでした。
彼の場合は、おもむろに宿題をやり始めましたが。
私は、どうしていいか分からなくなりました。
途方にくれていると、母が私のお腹に話しかけてくれました。
彼女は、孫の誕生を喜んでくれるのでしょうか。
母の反応はうれしかったものの、私が惨めな気持ちでいるとき、とうとう子供を生むときが来てしまいました。
ちょうど居間にいたヨハンが、いつかの時のように、私を応援してくれました。
こんな状況のときは、きっと誰だってそうしますよね。
生まれたのは、女の子でした。
私は彼女を、ヴァネッサと名づけました。
父親と同じ瞳の色をしています。
ヨハンが、冷蔵庫に隠れてガッツポーズをしてくれました。
とりあえず、無事に生まれたことは喜んでくれたようです。
子供に罪はありませんものね。
新しい家族は、まず母によって歓迎されました。
「ヴァネッサちゃ-ん、ばぁばですよ~」
母には、本当に感謝しています。
そして驚いたことに、ヨハンもこの新しい家族を歓迎してくれたのです。
まるでわが子のように接してくれました。
パスカルや、マルコのとき以上かもしれません。
ヴァネッサは感謝の印に、ヨハンの顔にげろを吐きました。
ずっと胸に引っかかっていたものが、すっと解けるようでした。
マルコもまた、ヴァネッサの誕生を喜んでくれたのです。
思ってもみない事でした。
私の心に隙間を空けたのもヨハンなら、それを埋めてくれたのも彼でした。
こうしてついに私は、ヨハンと母とともにこれからも生きていくことを決心しました。
もうアダムは私には必要ありません。
ヴァネッサのことも、彼には知らせないことにしました。
彼はすでに、幸せな家庭を持っている人なのですから。
ヴァネッサは、家族に見守られて、すくすくと育っていくことでしょう。
少なくとも私は、彼女を生んだことはもう後悔していません。
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