アダムに電話をかけました。
「今日これから、デートに行かない?」
二つ返事でアダムは承諾してくれました。
まず最初に、小さな画廊に遊びに行きました。
ここのオーナさんは、リバーブロッサム・ヒルズに住む人々の姿を描くのをライフワークとしているようです。
私たちのことも、いつか描いてみたいとおっしゃてくれました。
人物画のほかには、こんな夕焼けのような絵もたくさん展示されてました。
これはどんな意味を持つんでしょうかね。
私は絵に夢中で、アダムの様子がおかしいことに、なかなか気がつきませんでした。
気がついてキスしようとすると、やさしく拒まれました。
お腹が空いたんですって。
それじゃあ、食事に行きましょうか?
「あのさ、話があるんだけど……」
「なに?」
彼の話は、突然でした。
「俺ね、婚約者がいるんだよ」
あまりに突然な話です。
どうやら大学を中退した後、親御さんの決めた人を婚約者として迎えたようなのです。
「式も決まってて、今年の春なんだ」
これはあんまりです。
彼は私を愛していなかったのでしょうか。
ところが、当然腹を立てていいはずなのに、私は少しも怒りがわきませんでした。
「じゃあ、もう、こんな風には会えないね……」
妙な話です。
私たちは食事の後、あっさりと分かれました。
シェフサラダ、おいしかったです。
そのあと私は一人で、また別のレストランに入りました。
私は戸惑っていました。
彼に婚約者がいると分かったとき、怒りがわかなかったどころか、心のどこかでほっとしている自分がいたのです。
その理由が、私には分かりませんでした。
あるいは、分かりたくなかったのかもしれません。
ところで、この店の照明、ちょっときつすぎですね。
シェフサラダを食べて、とぼとぼ家へと帰ります。
今日は疲れました。
空を見上げると、都会の夜空が見えました。
明日は晴れそうですね。
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