「ただいまー」
「すぴー」
寝てるや。
今日もずっとミシンしてたのかな。
「電話?」
今、12時くらいなんだけど。
「もしもし。あれ、チャーリー?
こんな夜中に何の用?」
「週末の予定?
うーん。俺もバイト休みだし、姉貴も多分ミシンで家にこもってるんじゃないかな。
え? 姉貴と一緒に泊まりに来いって?」
あいつの家、庭が広いらしくて、夏の今頃はキャンプに最適らしい。
気分転換に遊びに行くのもいいかな。
「お前んちって、家族何人?
……怖い姉が2人?」
……絶対に姉貴を連れて行こう。
きっと気の合う女友達が2人出来ると思うよ!
「ふわ~。今のなにー?」
「チャーリーが明日の夜、泊まりにおいでって。行く?」
「そうねー。行ってもいいかもね」
「それより、今日のバイトどうだった?」
「昨日より2$時給が上がってたし、夕ご飯も食べさせてもらった。
でさ、今日は姉貴にプレゼントがあるんだ。
服買ってきたから、着てみてよ」
「服? どうせならお金くれればよかったわね。自分で選んで買うのに……。
ま、着てみるくらいならいいか」
やっぱり、あまり乗り気じゃないね。
「これ?」
そう。それ。
「ちょっとー。これパジャマでしょ。どう見ても」
「うん。パジャマ買ったんだ。俺も、自分の夏服買ったし」
「そのパジャマ、ブランド物ですっごく高かったんだよ。
着ないと損だよ!」
「高い……」
「うーんと、230$だったかな~」
「高っ!!」
最後の駄目押し。
これで着てくれるだろ。
あの大胆黒レースパジャマは、お預けです!
「ブランド物選ぶセンスあるのに、なんであんたはそのシャツなわけ?
その模様、なまずの魚影じゃない……」
「え? 変かな。涼しそうだと思ったんだけど」
さてと、家の中を片付けますか。
なんか微妙に散らかってるんだよね。
「ところで、なんで部屋に水たまりがあるの?」
「あんたが大人になったら、教えてあげるわ」
「……なんで?」
一連のことを知らない俺は、きっと幸せなのかもしれない。
「なんでこんなところに穴が。誰の嫌がらせ?」
家に帰っても、仕事はたくさん。
この後、請求書を出しておかないと。
(あいつの成績どうなんだろ。
私立校に入らないんだから、別にもうどうでもいいんだけどさ。
でも、ま・さ・か、FとかD-とかじゃないわよね。まさかね)
(それよりも、奴のナマズの魚影シャツをどうにかしないと。
いくらなんでも、ナマズはないわ)
(かわいい……)
あのパジャマ、特にスリッパのうさちゃんが、姉貴のハートをわし掴んだようです。
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