(えーと、ブルーウォーター村のエッジウォーター・パークウェイ100番地って、ここ……か)
社会福祉施設でずっと育ってきた俺に、養子縁組の話が来ました。
このまま、家族を得ることなく施設で成人するんじゃないかと思っていたから、嬉しいかも。
たいてい里子に求められるのは、小さな子供だから、今回の話は本当に運がよかったと思う。
「……」
にしても、小さくて殺風景な家だなぁ。
雑草もなければ、庭木の一本も植わってないし。
一応、新築みたいだけど。
コンコン……
「こんにちはー! 社会福祉施設から来ました」
「ハーイ、いらっしゃーい! 待ってたわよー!!」
(え? なに。この人……白い)
「って……あら? どちら様?」
「福祉施設から来ました。俺を引き取ってくれる人が、この家に住んでるって……」
この女の人、里親にしては若すぎるなぁ。
もしかして、俺の義理の姉になる人なのかな……。
「ええ!? 聞いてないわよそんな話。確かに養子縁組は頼んだけど、私が頼んだのは『男の子の赤ちゃん』なのよ」
「マ、マジっすか!? こっちは、『十代の男の子』を引き取りたい人がいるって、聞いたんですけど」
それ以前にこの人、子供を育てるには、ちょっと若すぎないかな……。
大人は大人なんだろうけどさ。
「ふーむ。どっかで手違いでもあったのかしらねぇ……」
「ちょっとそこで待っててくれる? 電話して聞いてみるから」
「あ、はい……」
「はぁ……」
やっぱりね。何かおかしいと思ったんだよ。
十代を里子に迎えるなんてさ。
……ところで、突然現れたこの男の人誰?
玄関先に、ピンクのプレゼントBox置いて行ったんだけど。
あの女の人の、彼氏かなんか?
「あ、社会福祉施設さん? ちょっとどういうことなんですか。 話と全然違うじゃない」
“誰も、あんな大きな子供なんか頼んでないでしょ! もうちょっと、しっかり対応してくださる!?
いらないのよ、ティーンは。私は赤ちゃんが欲しいの、赤ちゃんが!
え? グリルドチーズ? 訳わかんない事言ってとぼけんじゃないわよ、この野郎! 上の人を出しなさい!! 上の人!!!”
「……」
よく通る声だなぁ。
それとも壁が薄いのかよ、この家。
「くそぅ。結局、話が通じなかった。明日、もう一度電話しなきゃ。……やだ、あの子。まだいる……」
(とりあえず来ちゃったものは、ほっとくわけにもいかないか……。何、この箱……)
「おーい! 外は寒いから、中に入っておいで~」
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