「ただいま~」
だめだ。朝にプールで泳ぐんじゃなかった。
体力の限界。
「ふぅ」
ようやく一息。
「お帰り。夕ご飯できてるわよ」
「ふぁ~い……」
今日もピザじゃないんだ!
「おおっ! なんか豪華じゃない?」
「たいしたもんでしょ。スーパーのお惣菜じゃないのよ。
この私じきじきの手作りよ。三ツ星レストランを超えたわね」
姉貴鼻高々だけど、結局火を使わないサラダなんだよね。
健康的といえば健康的だけど。
「大変だったのよ~。
特にたまねぎ切ると、涙が止まらなくって。
そういえば、レタスの水切り。あのくるくる回すやつ買ってなかったわね。
今度買ってこないと」
「あ……、お皿の下にたまってるやつ、ドレッシングじゃなくって水なんだ……」
あれ、下向いたらなんだか眠く……。
バタッ!
「!!?」
「わ、私のサラダが……っ!!!」
「あ、は、はい!?」
「起きたんならよろしい。とっとと食べちゃって」
「鼻に水とたまねぎが入った……」
「話し変えていい? 私の仕事だけどさ、とうとうレギュラー入りはたしたじゃない」
「あ、もうルーキー卒業したんだ」
「またすぐに昇進できそうよ」
「すごいな! 姉貴って、スポーツの才能あるんじゃないの!?」
「よしてよ。私はあくまでお給料のためにやってるだけだもの。
ま、近々ボーナスが入るかもよって話」
「ボーナス入ったら、半分は借金返済。半分は旅行の積み立てにできるかもしれないわ」
「うちもそれくらい生活に余裕が出てきたってことだね。
ああ、そういえば朝近藤が来てた。中古車の資料置いてったけど、見た?」
「ああ、あのパンフレット?
中古車の購入もあったわね。
……ねぇ、聞いてる?」
「あへ?」
ばたっ!
「……こりゃ、だめだわ。話になんない」
「ZZZZZZZ」
「…………」
「それはそうと、いい成績とってスポーツトロフィーもらったら、さぞかし良いお値段で売れるかもね~。
そうしたら、そっちを車の購入費に当てても良いわけだし♪」
姉貴、一人で強引に会話を進めないでください……。
こうしてこの木曜日は、強制終了で終わった。
俺、明日大丈夫かな。
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