朝。
専業主夫の礼治さんは、ゴミ出し。
これでも、かつては悪の黒幕だったんです。
ピードルさんは、郵便屋のお姉さんになでてもらって、やっぱり目じりが下がり気味。
「早いものですわねぇ。
昨日生まれたと思ったら、今日大学へ入学だなんて」
「そうだねぇ」
お料理番組をバックに、夫婦の会話。
「大学では、家を借りてあげましょうか。
小さな寮では、あの子きっと不便しますわ」
「う~ん。その事なんだけどねぇ」
「あの子もここいらで、少し苦労した方がいいのかもしれないよ。
僕たち、お金では一切困らなかったけど、世間一般では必ずしもそうじゃないもの」
「そうですわね。世間の荒波にもまれた方が、いいのかもしれませんわね」
ちっとも苦労しなかった人達が、苦労について語る……。
そうこうしている内に、慧君が帰宅。
成績がA+だと分かりきっているのか、バスから降りるとすぐ宿題を取り出しました。
普通は、毎回成績表を確認すると思ってたんですけど……。
「パパ、ただいま~」
「これは……。なんと……」
生放送の料理番組で、火事発生中。
礼治さん、テレビに釘付けです。
「さーて宿題っと」
帰ったらすぐ取り掛かります。
関心関心。
慧君には、苦手科目なんてないのです、きっと。
礼治さんはお風呂。
優雅な専業主夫稼業です。
さて、宿題が終わった慧君。
iPodを聞き始めました。
「今夜大学へ出発かぁ。一人暮らし楽しみ~」
彼は両親が家を借りてくれると思っている様子。
「あ、玲子ちゃん?
そっちも今夜大学へ発つの? じゃ、一緒のタクシーで行こうよ」
ガールフレンドに電話。
大学でも彼女とうまくやっていけるのかな。
今夜はご馳走。
真理さんの特製ラザニアです!
「僕大学を出て、地球をどうこう出来るすごい男になって帰ってくるよ!」
ちなみに佐武家の男子は、おじいちゃん、父と続いて悪の黒幕。
佐武家の巨額の財産は、汚れたお金で出来ているのです。
慧もそれを継ぐ気か。そうはいきませんよ。
「大学の話なんだがなぁ。ねぇ、真理さん?」
「私からですの?」
「あのね、慧。大学では寮に入ったらいいと思うの」
「寮?」
「貸家で一人暮らしは、ママ達も心配なのよ」
「それもいいかもね!
伝統あるシム州立寮とか、赤レンガのクランプルボトム寮とか。
寮でもいいところ沢山あるみたいだし! 一部屋も広いらしいよ」
まだ何も知らない慧君。
「沢山の人と一緒に住むの初めてだから、わくわくするよ~」
「……」
心配な親心。
「寮で大学卒業したら、宇宙をどうこうできる男になれるかもね!」
夢はスペースパイレーツ?
それもいいかもしれない。
「ピードル、僕そろそろ出発するから……」
お別れの挨拶もしないマイペース犬。
ちなみに、慧君の奨学金総額は6250$。
バイトしなくても、すでにこんなに稼いでます。
終わり
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